普通ってなんだろう?
あたり前を広げてみんなが生きやすい社会を
宗像市には「さつき会」という社会福祉法人がある。まだ福祉という言葉が曖昧だった1980年代から、障がい者の居場所をつくったり、就労支援をおこなったり。徐々に活動の幅を広げ今では地域のイベントや産業の下支えしていたりもする。そんなさつき会を運営する、上田大地さんと上田浩司さん、鬼塚麻菜さんの3人からお話を伺った。
はじまりは「どろんこ農園」
みんなでただいっしょに暮らしていました
さつき会は、1983年に「どろんこ農園」という農園を設立したのが始まりなのですが、実際は何もない土地にただ農園の看板を立てたところからのスタートだったんです。創立者であり、僕たちの父でもある上田敏明は、もともと東京の病院でケアワーカーをしていたのですが、障がいや心の病を持つ方に接していく中で、医療にできることの限界を感じたのだそうです。治療ではない方法で彼らが活き活きと生きていける方法はないものかと模索する中で、東京から自然豊かな福岡の久山町に移住したことが始まりでした。最初は福祉施設と呼べるものではなく、不登校の子供や障がいのある方に居場所を提供して、ただいっしょに住んでいたというほうが正しいかも知れません。当時はまだ福祉の制度化も進んでいなかったので、どこにも行き場のない人がたくさんいました。そんな人達が大勢集まって生活をしていたので、子供ながらに毎日賑やかだなと感じていたことは覚えています。(浩司さん)
行動を促す熱い気持ちと
どんな結果も受け止めるクールな態度
当時はまだ今のような「グループホーム」という概念もなく、障がいを持つ人を社会から隔離することが常識だった時代だったのですが、うちの場合は地域の中で生活を共にしながらさまざまな活動をしていました。突然に自然に触れ合おうってみんなで7泊8日のキャンプにでかけたり、農園の敷地の中に鶏舎を建てて3000羽くらいの鶏を飼育したりしていたり。家の中にはいろいろな人がいて、飛んだり跳ねたりしているわけですから、想像できないことが次々と起こるんです。そもそも何が「あたり前」なのかわからないまま育ってきたのんでしょうね。障がい者に「何かしてあげよう」とか奉仕の精神なんて考えることもなく、毎日みんなで「何かおもしろいことをいっしょにしようぜ!」という感じでした。実はこの感覚は、さつき会というサービスを運営していく上でも大切だと思っていて、「何かしてあげよう」という感覚だと、期待と結果にギャップが生まれた時に、摩擦が起こることもあるんですよね。福祉をするにあたって、行動促す熱い気持ちは重要ですが、結果に対してはクールに受け止めて支援し続けることが大切なんだと思います。(浩司さん)
子供のころに感じた
みんないろいろで楽しいという
気持ちを大切にしているんです
私自身も兄と同じように、物心ついたころには周りに障がい者があたり前にいる環境で育ったので、そもそも普通っていうものが、体験としてはよくわかってないんです。みんなでいっしょにキャッチボールとかをしても、私はまっすぐ投げるんですが、みんな上に投げたり、全然ちがうところに投げたり。それはそれで楽しいので「あれ?」ってなりますよね。今になって振り返ると、そういう「みんないろいろでみんな楽しい」っていう感覚がとても重要なんだと思いますね。障がい者に対してというのはわかりやすい例なのですが、本来は障がいの有無ではなく、地域全体で多様であることを認め合う感覚が根付いていけばなと思っています。今は小学校でも特別支援学級ができたり、いっしょにいる機会が減ってきているので、無理のないやり方で地域の中にそんな機会をつくっていければと。(大地さん)
テナントとして
福祉施設があることの可能性
実は私、日の里出身なんです!さつき会ではグループホームの運営に関わってきたのですが、ずっと児童分野にも関わっていきたいなと思っていたので、今回48号棟で子供たちの支援という形で活動をはじめられるのは、すごくいろいろな縁を感じています。48号棟では、201号室と202号室を使って、「げんきっこくらぶ るーつ」という地域の子供たちの発達支援をおこなっていこうと思います。学校や家に居づらい子供たちのケアももちろんですが、障がいをもつお子さんの保護者の方々の居場所にもなればと思って。保護者の方々は、常に気を張り巡らせているんです。そしてもし何か起こったときには、例えそれが小さなことでも引け目を感じてしまう方が多くて。そんな方々の気の休まる場所になれればいいですが、まずは少しでも支えになっていければと思っています。今回は施設ではなくテナントとしての入居なので、不安ももちろんありますが、地域の中で自然と顔を合わせて、いっしょに居られるような関係づくりが挑戦なのかもしれないですね。(鬼塚さん)
さとの、ひっさつわざ
さつき会の皆さんからお話を伺っていると、普通ってなんだろうな?と改めて考えてしまう。多様性という言葉がどんどん使われてはきているが、言葉以上のものが社会に浸透したかというと、まだ疑問のほうが多いというのが現状だろう。「医療は悪いところを治すのですが、福祉は良いところを伸ばすことなんです」相手の良いところを積極的にみつけ、それを社会とつなげていく。創設者の敏明さんから引き継いだ、そんな精神が地域のあたり前を広げてくのかもしれない。
さとのビール第一弾にさつき会のみなさんが登場!
日の里団地48号棟がリニューアルした「ひのさと48」には、クラフトビールを醸造するブリュワリーがオープン!宗像産大麦を使用した「さとのビール」第一弾にはさつき会のみなさんのひっさつわざをイメージしたパッケージも登場します。味でもパッケージでもお楽しみください!
他にもたくさんのひっさつわざが!
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アグリCATSまねき猫:岩佐洋一さん試行錯誤を楽しむ、これが「おいしい」の秘訣です。
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日の里地区コミュニティセンター:永嶋久子さん日の里にはお土産がなかったので、
地域の子供たちとお饅頭をつくったんです -
鐘崎のあまちゃん:本田藍さん海女を守ることが海を守ることだし
海を守ることが海女を守ること -
カフェロココ:高崎信代さんテンちゃんがきっかけになって、
宗像のいいところを知ってくれたら -
グランジュール:吉武麻子さんアレルギーがあってもなくても
おいしいって言えるものを届けたい -
サニックス:渡邊敏行さんグラウンドでは倒すべき相手でも
そこを出れば友達になれてしまうんです -
ひかり幼育園:堤智行園長答えは子どもたちが持っている
それを引き出し表現できる園でありたい -
日の里学園:北岡先生・堤先生学校と地域がいっしょに
成長していける関係づくり -
宮崎親子:宮崎陽子さん・泰地さん日の里から受け取ったものを、日の里にかえしていく
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宗像市役所:内田忠治さん・濱村隆さん知ってます?宗像って
東京の通勤圏内なんです! -
大分大学:柴田建先生目的をつくらず、そこにいる。
まちづくりにはそんな役割が必要なんです。 -
社会福祉法人さつき会普通ってなんだろう?
あたり前を広げてみんなが生きやすい社会を
ひのさと48へのアクセス
現地へのアクセスは、JR東郷駅日の里口から徒歩約15分です。駅からタクシーをご利用の場合は「48号棟まで」とお伝えいただくか、下記住所をお知らせください。
〒811-3425 福岡県宗像市日の里5丁目3−98日の里団地48号棟(Google Mapで見る)
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