まちづくりを、さとづくりに

大分大学:柴田建先生

目的をつくらず、そこにいる。
まちづくりにはそんな役割が必要なんです。

2017年、日の里の街に「日の里サードベース」という空き店舗をリノベーションした拠点が誕生した。「みんなの秘密基地」というコンセプトのもと、住民や行政、企業の方々が集まり、これからの日の里のあり方についてのワークショップを開催したり、地域の方々といっしょにイベントを開催してきた場所だ。このさとづくりプロジェクトの原点ともいえる拠点設立に大きく関わったのが、もと日の里の住民であり、現在、大分大学創成工学科建築学コースの准教授(前職:九州大学)をされている柴田建先生だ。

生活やコミュニティについて
どれだけ勉強しても
そこに住む人には一生かなわない

僕個人の専門は戸建て住宅なのですが、大学の研究室では集落での生活やコミュニティの研究をおこなっています。実際に現地に滞在し、生活の中から答えを探すような研究なのですが、どこの地域に行っても感じるのは「そこに住む人にはかなわない」ということ。大学で専門に研究しているからといって、現場の体験に置き換わっていない知識ばかりだなと思い知らされます。僕よりもはるかに年上で、年齢的には「高齢者」と呼ばれるような人たちが、崖みたいな坂道をぐんぐん登っていくパワーを目の当たりにしたり、その場所のその季節にしかない小さな習慣に触れたり。専門知識ももちろん大切ですが「習うべきは現場」だなと思います。これは僕の研究室に所属しているゼミ生にも伝えていて、研究の一環として、地域の商店街の空き店舗をお借りしてその場所に滞在し、そこに住む方々と一緒の時間を過ごすことで、現場から気づきを得てくれればなと思っています。

ひとりの人間として
その場所で何を感じるか

旅行の場合は目的が明快ですが、生活の目的は曖昧です。だから研究で地域に滞在するときは、生活者の目線になるために事前に目的をつくらず「ただそこに居る」ことからはじめます。不思議なことに軒先で魚を焼いたりしながら数日過ごしていると何か地域からのアプローチがあってコトが起こるんです。立場上「まちづくり」の会議などにも参加することが多いのですが、生活者の考えていることや価値観ってその目線になってみないと、言葉になっていない問題を共有することができないので、深い議論ができないんですよ。行政や企業が地域で何か始めようと思うと、最初に目的とか成果の設定が求められるんです。そうなるとすでに言語化されている問題までの議論しか出来ないですよね。僕たちみたいな存在が、そこで「ぼーっと過ごす」ことでリアルな状況を拾うことができる。まちづくりにはそんな役割が必要だと思うんです。

目の前のおばあちゃんは
ハッピーかい?

日の里の場合は、私はもと住人という縁もあるんですが、大学という看板を背負った研究者という顔もあります。大学の関わり方としては営利を目的としていないので、行政と企業と住人のちょうど真ん中に立つことができるんです。そんな中立的なポジションから、企業やデザイナーなどと住人をつないぐこともできるし、営利や自己表現に傾きすぎた時に意見することだってできます。今プロジェクトで進めているひのさと48や、これからつくられる住宅地などがまさにそうですが、地域活動って一部の人や、意識の高い人だけで盛り上がるだけならないように、気をつけないといけないんですよね。そこに住んでいる目の前のおばあちゃんや、公園にいつもいる幼稚園の子供たちはハッピーになれたのか?そんな目線を持って活動に寄り添い自問自答し続けているんです。

これからの地域コミュニティづくり

地域活動やエリアマネジメントって、日本の不動産売買ではまだあまり重視されてなく、どちらかというと購入後はやりたい人がやるみたいな感覚ですが、海外だとそういった活動があるかどうかが不動産価値に直結するので、良くも悪くもみんながお金を出し合うんですよね。日本の場合は、もともとが相互扶助の社会だったからか、お金よりも人をかける習慣があったのですが、戦後教育の中で土着的なコミュニティが解体され、地域に参加するという意識が希薄になってるんです。そういう意味では、今回の「さとのビール」や、ちょっとしたクリエイティビティが発揮できるDIY工房や、コミュニティカフェなど、関わってみたくなるコンテンツがいくつかあるのはエリマネの視点でも興味深いと思っています。都心だけでなく、日の里のような郊外にもワクワクできるような事が起こってほしいし、この場所で育つ子供たちに、積極的に街に関わっていいんだよと伝えていけるといいですよね。

さとの、ひっさつわざ

住宅を専門とする建築のプロでもあり、大学の研究者でもあり、日の里の場合は元住民でもある柴田先生。たくさんの立場に立ちつつも、大事なのは生活者の目線になり、そこで生活する人たちを尊敬する態度だという言葉がとても印象に残っている。ひとりの人間として何を感じるか。肩書を超えたそんな現場での姿勢が柴田先生のひっさつわざなのだろう。

さとのビール第一弾に柴田先生のお二人が登場!

日の里団地48号棟がリニューアルした「ひのさと48」には、クラフトビールを醸造するブリュワリーがオープン!宗像産大麦を使用した「さとのビール」第一弾には柴田先生のひっさつわざをイメージしたパッケージも登場します。味でもパッケージでもお楽しみください!

【宗像の人を紹介】

他にもたくさんのひっさつわざが!

【We are here!】

ひのさと48へのアクセス

現地へのアクセスは、JR東郷駅日の里口から徒歩約15分です。駅からタクシーをご利用の場合は「48号棟まで」とお伝えいただくか、下記住所をお知らせください。
〒811-3425 福岡県宗像市日の里5丁目3−98日の里団地48号棟(Google Mapで見る)

【お問い合わせ】

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